バックオフィス業務の切り出し方|外注範囲と社内に残す業務の判断基準

はじめに
「経理や総務の一部を外部に任せたいが、どこまで任せてよいのか判断できない」
「担当者の判断が入る業務が多く、外注できるのは単純作業だけではないか」
「外部に任せたはずなのに、確認や問い合わせ対応で、結局社内の手間が減らなかった」
バックオフィス業務のアウトソーシングを検討する際、このような悩みを抱える企業は少なくありません。業務を外部に任せるうえで重要なのは、「何を任せるか」だけでなく、どこまで任せ、どこから社内で対応するかを明確にすることです。
例えば請求業務であれば、請求書の作成だけを任せるのか、金額の確認や入金照合まで任せるのかによって、委託範囲は大きく変わります。請求金額が契約条件と一致しない場合に、委託先がどこまで確認し、どの時点で社内へ戻すのかも決めておく必要があります。こうした役割分担が曖昧なままでは、委託先は判断に迷い、社内には確認や調整の業務が残ってしまいます。
この記事では、バックオフィス業務を外部委託する際の「業務の切り出し方」を5つのステップで解説します。判断が必要な業務の任せ方から、社内との役割分担、委託後に残る管理業務と費用対効果の考え方まで、請求業務の具体例を交えて紹介します。
業務の切り出しとは?外部と社内の役割分担を決めること
業務の切り出しとは、現在社内で行っている業務を工程ごとに整理し、外部に任せる範囲と社内で対応する範囲を明確にすることです。
バックオフィス業務のアウトソーシング(外部委託)は、経理・総務・人事労務・営業事務などの業務の一部または全部を、外部の事業者に委託することを指します。ただし、同じ「請求業務のアウトソーシング」でも、請求書の作成だけを委託する企業もあれば、請求データの整理から送付、入金照合まで委託する企業もあります。業務名だけで判断せず、実際の業務の流れに沿って委託範囲を設計することが大切です。
切り出しの前提となる業務棚卸し
業務の切り出しを進めるには、まず現在どのような業務が行われているのかを把握する必要があります。業務名、担当者、発生頻度、工数、作業内容、使用ツールなどを整理する「業務棚卸し」の進め方は、「業務棚卸しとは?やり方・項目・粒度を記入例と生成AIプロンプトつきで解説」で詳しく紹介しています。
この記事では、業務棚卸しで把握した業務を、どのように外部委託の判断につなげるかに焦点を当てます。
業務の切り出しで決める4つのこと
業務を外部に任せる際は、主に次の4つを明確にします。
| 決めること | 確認する内容 | 曖昧な場合に起こり得る問題 |
|---|---|---|
| 委託範囲 | どの工程からどの工程まで任せるか | 作業の抜け漏れや認識違い |
| 判断の権限 | 委託先が判断できること、社内に確認すること | 作業の停滞や誤った処理 |
| 情報の受け渡し | 必要な情報、形式、期限、担当者 | 情報不足による差し戻し |
| 委託後の管理 | 成果物の確認、承認、報告、改善方法 | 品質の低下や社内の管理工数の増加 |
以降の5つのステップは、この4つを順に決めていくための手順です。

バックオフィス業務の切り出し方5ステップ
バックオフィス業務の切り出しは、次の5つのステップで進めます。
- アウトソーシングの目的と社内に残す役割を決める
- 業務を工程に分け、判断と情報の受け渡しを整理する
- 各工程について、廃止・改善・自動化・外部委託・社内対応を検討する
- 委託候補を評価し、委託する単位を決める
- 委託範囲を文書化し、段階的に業務を移管する
ポイントは、外部に任せることを前提にするのではなく、現在の業務そのものを見直したうえで、工程ごとに適切な処理方法を選ぶことです。
ステップ1:アウトソーシングの目的と社内に残す役割を決める
最初に、なぜバックオフィス業務をアウトソーシングするのかを明確にします。目的によって、優先的に切り出すべき業務が変わるためです。
| アウトソーシングの目的 | 優先して検討する業務 |
|---|---|
| 担当者の負担軽減 | 発生頻度が高く、工数の大きい業務 |
| 休職・退職への備え | 特定の担当者しか対応できない業務 |
| コア業務への集中 | 経営者や営業担当者が兼務している事務作業 |
| 業務品質の安定 | ミスや期限遅れが発生しやすい業務 |
| 業務の改善 | 重複作業や非効率な手順が残っている業務 |
例えば、属人化の解消が目的であれば、作業を外部へ移すだけでは不十分です。手順や判断基準を整理し、担当者が変わっても業務を続けられる状態を目指す必要があります。
あわせて考えておきたいのが、アウトソーシング後も社内に残すべき役割です。請求業務であれば、請求金額の最終承認や取引先との重要な条件交渉は社内で行い、請求書の作成や送付を外部に任せる、といった形です。委託後に目指す体制を先に描いておくと、その後の切り出しが進めやすくなります。
ステップ2:業務を工程に分け、判断と受け渡しを整理する
次に、業務棚卸しで把握した業務を、実際の作業工程に分けます。分ける目安は、次のような変わり目です。
- 担当者や部署が変わる
- 判断が必要になる
- 情報やデータの受け渡しが発生する
- 使うツールやシステムが変わる
工程を分けたら、特に次の2点を確認します。
① 判断が必要になる箇所
担当者が何を根拠に判断しているのかを確認します。例えば、請求金額が契約条件と一致しない場合に、どの資料を確認し、誰に相談しているのかを整理します。
② 情報を受け渡す箇所
誰が、どの情報を、いつ、どのような形式で次の担当者に渡しているのかを確認します。例えば、営業担当者が請求対象の一覧をバックオフィス担当者へ共有している場合、その一覧に必要な項目がそろっているかを確認します。
マニュアルがない業務では、担当者自身も判断していることを意識していない場合があります。「どのようなときに作業が止まりますか」「判断に迷ったら誰に確認していますか」と尋ねると、明文化されていなかった業務のルールを把握しやすくなります。
ステップ3:各工程について処理方法を検討する
工程ごとに、適切な処理方法を検討します。すべての工程を外部に任せることが最適とは限りません。
| 処理方法 | 検討する工程の例 |
|---|---|
| 廃止・削減 | 利用されていない管理表の更新、不要な重複作業 |
| やり方を変える | 部署ごとに異なる申請様式の統一、確認手順の見直し |
| 自動化する | ルールが明確なデータの転記、集計、通知 |
| 外部に任せる | 人による対応が必要で、社外でも実施できる工程 |
| 社内に残す | 経営判断、重要な承認、社内固有の調整 |
廃止ややり方の変更を先に検討するのは、現在のやり方をそのまま外部に移しても、業務全体は効率化しないためです。例えば、複数の担当者が同じ情報を別々に入力しているなら、委託や自動化の前に入力方法そのものを見直す方が適切かもしれません。
ただし、目的が分からないという理由だけで、業務を廃止してはいけません。成果物を誰が使っているか、やめた場合に何が起きるかを確認してから判断します。業務の仕組み全体を見直す考え方は「BPRとは?業務改善との違い・進め方をわかりやすく解説」で紹介しています。
また、自動化と外部委託は二者択一ではありません。データの転記などを先に自動化し、残った確認作業だけを外部に任せることもできます。自動化できる部分を先に除くと、委託する範囲や費用も変わります。
ステップ4:委託候補を評価し、委託する単位を決める
外部委託が適していると考えられる工程について、実際に任せられるかを評価します。評価の観点は、次の章「外部に任せられる業務の判断基準」で詳しく説明します。
もう一つ重要なのが、どの工程を一つのまとまりとして委託するかです。請求データの整理は外部、請求書の作成は社内、作成後の確認は外部というように担当が頻繁に入れ替わると、そのたびに情報の受け渡しや確認が必要になります。そのため、連続した工程はまとめて委託する方が効率的な場合が多くあります。
委託する単位を考える際は、次の2つを確認しましょう。
- 開始条件: 何の情報がそろえば作業を始められるか
- 完了条件: どのような成果物ができれば作業完了とするか
ただし、すべての工程を無理にまとめる必要はありません。請求書の作成と送付の間に社内承認を設けるなど、リスク管理や内部統制の観点から、あえて工程を分けることが適切な場合もあります。必要な確認や承認は残しながら、不要な受け渡しを減らすこと。「業務の分解は細かく、委託する単位はまとめて」を基本に、業務の性質に応じて範囲を決めましょう。
ステップ5:委託範囲を文書化し、段階的に業務を移管する
委託する範囲が決まったら、委託先との認識をそろえるために、業務内容と運用ルールを文書にします。最低限、次の項目を整理しておきましょう。
| 項目 | 記載する内容 |
|---|---|
| 委託範囲 | 対象となる工程、対象外となる作業 |
| 開始条件 | 作業に必要な情報や資料 |
| 完了条件 | 成果物の内容、納品・共有の方法 |
| 判断基準 | 委託先が判断できる範囲、社内へ確認する条件 |
| 納期 | 締め日、対応期限、対応時間 |
| 連絡方法 | 質問や例外処理の連絡先、回答期限 |
| 情報管理 | 使用するシステム、アクセス権限、機密情報の取扱い |
| 品質確認 | 確認担当者、確認方法、修正時の対応 |
| 運用改善 | 報告の頻度、振り返り、業務範囲の見直し方法 |
これらは業務手順書や委託範囲の確認資料にまとめ、必要に応じて契約書や仕様書と整合させます。マニュアルがない場合は、担当者へのヒアリングや実際の作業確認を通じて整備していく方法もあります。委託前にすべての手順を完成させる必要はなく、業務整理やマニュアル作成まで対応できる委託先であれば、一緒に整備することもできます。

移管は段階的に進める
業務の移管は、最初からすべてを切り替えるのではなく、試行期間を設けて運用を確認しながら進めます。
- 委託先が実際の業務を行い、社内担当者が結果を確認する
- 発生した質問や差異を記録し、マニュアルや判断基準を修正する
- 作業の安定性と誤処理の影響を踏まえて、継続する品質確認の方法を決める
- 運用が安定した段階で、必要に応じて委託範囲を広げる
品質確認は、必ずしも全件確認から抜き取り確認へ切り替えるものではありません。金額や送付先の誤りが重大な問題につながる業務では、安定後も全件確認が必要なことがあります。一方、影響の小さいデータ入力などでは、処理状況を確認したうえで抜き取り確認へ移行できる場合もあります。
また、月次業務では通常月の処理だけでなく、契約変更や締め日が重なる時期などに発生する例外も把握しておくことが重要です。並走期間は一律に決めず、必要な業務パターンを一通り確認できる長さを確保しましょう。
外部に任せられる業務の判断基準
ここからは、業務を外部に任せられるかどうかを判断するための基準を解説します。
判断が必要な業務でも外注できる?判断を3つのレベルに分ける
「担当者の判断が必要な業務は、アウトソーシングできない」と考える方もいるかもしれません。しかし、判断基準や権限を明確にすれば、判断を伴う業務でも外部に委託できる場合があります。判断は、次の3つのレベルに分けて考えると整理しやすくなります。
| 判断のレベル | 具体例 | 委託するときの考え方 |
|---|---|---|
| ① ルールに基づく判断 | 取引先ごとに登録された送付方法を選ぶ | 基準を共有すれば委託しやすい |
| ② 例外への対応判断 | 請求金額と契約条件が一致しない | 一次確認までを委託し、社内へ戻す条件を決める |
| ③ 権限や責任を伴う判断 | 値引きの承認、契約条件の変更 | 原則として社内に残す。委託する場合は権限と責任を明確にする |
例えば、請求金額が契約内容と一致しない場合、委託先が契約書と請求データを照合し、不一致の内容を整理するところまでは任せられる可能性があります。一方、その差異を認めて請求金額を変更するかどうかは、社内の責任者が判断する、という分担が考えられます。あらかじめ承認された条件の範囲内であれば、委託先に一定の判断を任せる方法もありますが、社内規程や契約条件、法令上の制約を確認することが前提です。
大切なのは、判断をすべて社内に残すことではなく、判断に必要な情報を集めることと、最終的に決定することを分けて考えることです。そのうえで、委託先が判断できる条件と、社内に確認すべき条件を明確にします。こうした判断基準の整理は、担当者の経験に頼っていた業務を言葉にし、属人化を解消することにもつながります。
委託の適否を評価する6つの観点
外部委託の候補となる工程は、次の6つの観点から確認すると判断しやすくなります。
| 評価する観点 | 確認するポイント |
|---|---|
| ① 手順の標準化 | 誰が対応しても同じ手順で処理できるか |
| ② 業務量・経済性 | 件数や工数に対して、委託費用と管理負担が見合うか |
| ③ 判断・例外処理 | 判断基準が明確か、例外がどの程度発生するか |
| ④ 権限・情報管理 | 必要な情報と権限を安全に共有できるか |
| ⑤ 前後工程との関係 | 開始条件、完了条件、情報の受け渡しが明確か |
| ⑥ 品質・リスク管理 | 成果物を確認できるか、誤処理の影響を管理できるか |
例えば、毎月多くの請求書を作成している企業は、作業量の観点では外部委託に向いているかもしれません。しかし、取引先ごとに複雑な契約条件があり、社内への確認が頻繁に発生する場合は、委託後の管理負担が大きくなる可能性があります。
6つの観点すべてが良好でなければ委託できない、というわけではありません。委託前に準備が必要な点を明らかにし、解消できるかを検討することが重要です。判断基準が曖昧であれば、委託先とのヒアリングを通じて整理する方法があります。一方、情報を安全に共有できない、法令上委託できないといった問題がある場合は、委託範囲そのものを見直す必要があります。
どの業務から切り出すか?必要性と委託のしやすさを分けて考える
複数の委託候補がある場合は、委託する必要性と委託のしやすさを分けて考えると、優先順位を判断しやすくなります。
| 業務の状態 | 優先順位の考え方 |
|---|---|
| 負担が大きく、委託の準備も整っている | 優先的に移管を検討する |
| 負担は大きいが、判断基準が曖昧 | 業務の整理を先に進め、移管に備える |
| 負担は小さいが、委託しやすい | 関連する業務とまとめられないか検討する |
| 情報管理や誤処理のリスクが高い | 安全な運用方法を確認し、必要に応じて範囲を見直す |
例えば、業務量が多くても判断基準が整理されていなければ、すぐに委託するよりも、先に業務を標準化した方がよい場合があります。一方、比較的単純な業務を小さく切り出し、運用を確認しながら委託範囲を広げる方法もあります。何から着手するかは、業務の負担、準備の状況、リスク、改善の目的を踏まえて判断しましょう。
外部委託する前に確認したい法令・契約上の注意点
バックオフィス業務の中には、法令によって実施できる者が制限されているものがあります。代表的な注意点は次のとおりです。
税務に関する業務
税務代理、税務書類の作成、税務相談は税理士業務とされ、行えるのは税理士・税理士法人など法令で認められた者に限られます。有償・無償を問わず、それ以外の者が行うことはできません。記帳補助などの一般的な経理事務と区別し、委託内容が税理士業務に当たらないかを確認しましょう。
社会保険・労働保険に関する業務
労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成や提出代行などには、社会保険労務士法による業務の制限があります。勤怠集計や給与計算の補助と、資格が必要な申請手続きは区別して考える必要があります。委託の可否は、具体的な業務内容や法令上の条件に応じて確認しましょう。
個人情報を含む業務
個人データの取扱いを外部に委託する場合、委託元には委託先に対する必要かつ適切な監督が求められます。適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先での取扱状況の把握、再委託の管理などを確認しましょう。
参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
委託先スタッフへの指示の出し方
業務委託(請負)か労働者派遣かは、契約の名称ではなく、実際の業務の進め方によって判断されます。委託元が委託先のスタッフに対して、業務の遂行方法や作業上の指示を直接行うと、偽装請負と判断されるおそれがあります。発注内容や成果物に関する確認と、労働者に対する指揮命令は区別し、日々の依頼や確認の経路を、契約形態に応じて委託先と事前に決めておきましょう。
参考:厚生労働省「労働者派遣・請負を適正に行うためのガイド」、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集
判断に迷う場合は、税理士、社会保険労務士、弁護士などの専門家に確認してください。

【具体例】請求業務を外部に切り出す場合
ここまでの考え方を、請求業務の例で確認してみましょう。営業担当者が契約条件を管理し、バックオフィス担当者が請求書の作成から入金確認までを行っている企業を想定します。
※以下は説明のための想定例であり、特定企業の実際の委託体制を示すものではありません。
工程ごとの役割分担
| 業務工程 | 担当 | 受け取るもの | 完了の条件 |
|---|---|---|---|
| 請求対象の確定 | 社内 | ― | 当月の請求対象と契約条件が確定している |
| 請求データの整理 | 外部 | 請求対象の一覧、取引先の登録情報 | 請求書の作成に必要な項目がそろっている |
| 契約条件との照合 | 外部 | 整理済みの請求データ、契約条件 | 照合が済み、不一致があれば内容が整理されている |
| 請求書の作成 | 外部 | 照合済み・確認済みの請求データ | 請求書ができ、承認待ちになっている |
| 請求内容の承認 | 社内 | 作成済みの請求書 | 承認または修正の指示が出ている |
| 請求書の送付 | 外部 | 承認済みの請求書 | 送付が完了し、送付記録が残っている |
| 入金状況の照合 | 外部 | 入金データ(閲覧専用の権限で確認)、請求情報 | 未入金・入金額の差異が一覧になっている |
| 差異・未入金への対応判断 | 社内 | 照合結果の一覧 | 原因の確認と対応方針が決まっている |
この例では、請求データの整理から請求書の作成までを、一つの委託単位としてまとめています。その後に社内の承認を挟むため、請求書の送付は承認後の工程として区切ります。入金照合も、入金データを確認できる時期に合わせて、別の作業単位として進めることが考えられます。関連する作業はまとめつつ、重要な承認や判断は社内に残すことで、効率と管理の両立を図ります。
契約条件と請求金額が一致しない場合はどうする?
業務範囲を決めるだけでなく、通常と異なるケースが起きたときの対応も決めておく必要があります。例えば、契約条件と請求金額を照合する工程では、次のように処理を分けられます。
| 照合の結果 | 委託先の対応 | 社内の対応 |
|---|---|---|
| 金額が一致した | 請求書を作成し、社内の承認待ちにする | 内容を確認し、承認する |
| 金額が一致しない | 請求書の確定を保留し、差異の内容を整理して社内へ報告する。社内の回答を受けて修正・作成を進める | 請求条件や金額を確認し、修正の要否を委託先に伝える |
| 社内から回答がない | 回答期限を過ぎた時点で、あらかじめ決めた責任者に確認を依頼する | 決めた期限内に回答する。担当者が不在のときの代わりの確認者を決めておく |
いずれの場合も、社内で承認されていない請求書は送付しません。また、新規の取引先や契約変更があった取引先は、作成した請求書を社内で全件確認するなど、確認を厚くする対象も決めておきます。
このように、通常の作業だけでなく、例外が発生したときに誰が何を判断し、どの条件で作業を再開するかまで決めておくと、委託先と社内の双方が対応しやすくなります。委託先からの確認に社内の回答が遅れれば、請求書の発行や送付も遅れます。委託先が何をするかだけでなく、社内側が何を、いつまでに対応するかも決めておきましょう。
自社の業務によって切り出し方は変わる
同じ請求業務でも、すべての企業で同じ役割分担が適切とは限りません。取引先ごとに複雑な契約条件がある企業では、判断基準の整理や確認手順の整備を優先する必要があるかもしれません。一方、請求金額がシステム上で確定している企業であれば、請求書の作成を自動化し、送付や入金照合を外部に任せる方法も考えられます。
一般的な業務一覧だけで委託できるかどうかを判断せず、自社の業務の進め方に合わせて切り出すことが重要です。
委託後に社内に残る業務と費用対効果の考え方
アウトソーシングを検討する際に見落としやすいのが、委託後も社内に残る業務です。業務を外部に任せても、社内の作業がすべてなくなるわけではありません。
委託後も社内に残る主な業務
| 社内に残る業務 | 内容 |
|---|---|
| 情報の準備 | 作業に必要な情報や資料を委託先へ共有する |
| 質問への回答 | 委託先からの確認依頼に対応する |
| 成果物の確認・承認 | 必要に応じて内容を確認し、承認する |
| 例外処理の判断 | 通常のルールで対応できない案件の方針を決める |
| 品質管理・改善 | 差し戻しや遅れの原因を確認し、運用を見直す |
委託する工程が細切れになっていたり、判断基準が曖昧だったりすると、こうした管理業務は増えていきます。アウトソーシングの効果を考える際は、外部に移す作業だけでなく、社内に残る工数も含めて評価しましょう。
社内工数の削減と費用対効果は分けて考える
アウトソーシングの効果を確認する際は、まず社内の工数がどのくらい減ったかを把握します。
社内工数の削減量 = 委託前の社内工数 − 委託後の社内工数
例えば、ある業務に月40時間かかっていた企業が、外部委託によって社内での対応を月10時間に減らせたとします。この場合、社内工数の削減量は月30時間です。
ただし、社内工数が減ったことと、企業全体のコストが下がったことは同じではありません。費用対効果を判断するには、委託費用や移管時の費用も含めて比較する必要があります。
| 項目 | 委託前 | 委託後 |
|---|---|---|
| 社内工数 | 40時間/月 | 10時間/月 |
| 社内の時間当たりコスト | 3,000円 | 3,000円 |
| 社内工数の金額換算 | 120,000円 | 30,000円 |
| 外部委託費用 | 0円 | 70,000円 |
| 移管費用(月額換算) | 0円 | 5,000円 |
| 合計 | 120,000円/月 | 105,000円/月 |
※数値は説明のための仮定です。移管費用30,000円を6か月で割って比較しています。実際の人件費や委託費用を示すものではありません。
この例では、社内の作業時間が月30時間減り、金額換算でも月15,000円の差が生じています。ただし、同じ条件で外部委託費用が月85,000円になると、委託前後の合計は同額になり、それを超えると委託後の方が高くなります。委託費用だけでなく、委託後に社内に残る工数を見積もることが判断の分かれ目になります。
また、社員の給与が固定されている場合、作業時間の削減がそのまま支出の削減につながるとは限りません。削減した時間を営業活動、顧客対応、業務改善などに使うことで、生産性の向上につなげることが大切です。
コスト以外の効果も確認する
アウトソーシングの効果は、工数や費用だけでは判断できません。次のような指標もあわせて確認しましょう。
- ミスや差し戻しの件数
- 納期や締め日の遵守状況
- 委託先からの質問の件数と内容
- 担当者の休職・退職時にも業務を継続できるか
- 業務手順や判断基準が文書化されているか
委託を始めた直後は、確認や質問が一時的に増えることがあります。初期の数値だけで判断せず、運用が安定するまでの変化を見ることが大切です。質問や差し戻しの内容を記録しておけば、マニュアルや判断基準の改善にもつなげられます。

Passageの支援事例に見る業務の切り出し方
Passage株式会社では、バックオフィス業務の代行に加えて、お客様の業務内容を理解し、必要に応じて業務の整理や運用体制づくりを支援しています。ここでは、実際の支援事例から、業務の切り出しに関係するポイントを紹介します。
株式会社シャルメ様:マニュアルが整っていない状態からの業務移管
美容・サロン事業を展開する株式会社シャルメ様では、事務・経理・総務などのバックオフィス業務を、一人の担当者様が幅広く担われていました。担当者様の産休を前に、業務をどのように引き継ぎ、継続していくかが課題となっていました。
Passageでは、2026年5月末頃から引き継ぎを開始し、担当者様へのヒアリングや業務確認を重ねながら、業務内容を一つずつ整理しました。その結果、6月の時点で主要な業務をPassage側で対応できる状態へ移行しています。並行して業務マニュアルも整備し、今後の担当者変更にも活用できる形にしました。
この取り組みで大切にしたのは、会社ごとのルールや判断が必要な業務を、委託先が独自に判断して進めないことです。担当者様からも、細かく確認しながら進め、勝手に判断しない点を評価していただいています。マニュアルが十分に整っていない状態でも、担当者と一緒に業務内容や判断基準を整理することで、外部委託につなげられることを示す事例です。
詳しくは「一人で抱えていたバックオフィス業務を、未来につながる仕組みへ」をご覧ください。
株式会社シンフォニード様:事業の変化に合わせた委託範囲の拡大
人材サービス事業を展開する株式会社シンフォニード様とは、2021年に営業活動の支援から取り組みが始まりました。その後、経理業務の支援を経て、SES事業の契約・請求に関するバックオフィス業務へと支援の範囲が広がってきました。
具体的には、毎月の作業報告書の確認から請求書の発行まで、営業担当者ごとの売上・粗利の管理、契約更新時期の確認などを支援してきました。最初からすべての業務をまとめて委託したのではなく、事業の状況や必要な業務が変わるたびに、双方で相談しながら役割を見直し、範囲を広げてきたことが特徴です。
アウトソーシングは、一度決めた業務範囲を固定して運用し続けるものとは限りません。業務の状況に応じて委託範囲を見直し、必要な役割を調整することも、安定した運用につながります。
詳しくは「事業の立ち上げを、安心して進められる体制へ」をご覧ください。
バックオフィス業務の切り出しに関するよくある質問
Q. 業務マニュアルがなくてもアウトソーシングできますか?
業務内容や委託先の支援範囲によっては可能です。現在の担当者へのヒアリングや実際の業務確認を通じて、作業手順や判断基準を整理しながら移管する方法があります。ただし、委託先が業務整理やマニュアル作成まで対応できるかは、事前に確認しましょう。社内側でも、ヒアリングや確認に対応する時間を確保しておく必要があります。
Q. 業務はどこまで細かく分ける必要がありますか?
担当者、判断、情報の受け渡しが変わる箇所を目安に分ければ十分で、通常はクリックや入力操作の一つひとつまで分ける必要はありません。ただし、誤操作の影響が大きい手順は、詳細なマニュアルが必要になる場合があります。業務を理解するための分解と、実際に委託する単位は分けて考えます(ステップ2・4を参照)。
Q. 委託した業務の品質はどのように管理すればよいですか?
成果物の確認方法、誤りが見つかった場合の対応、報告の方法を事前に決めておきます。移管初期の全件確認の後も、誤処理の影響が大きい業務は確認を続けるなど、リスクに応じて確認方法を設計しましょう(ステップ5を参照)。
Q. 委託先のスタッフに直接業務の指示を出してもよいですか?
業務委託(請負)の場合、委託元が委託先のスタッフに直接指揮命令を行うと、偽装請負と判断されるおそれがあります。連絡や指示の経路は、契約形態に応じて委託先と事前に決めておきましょう(「外部委託する前に確認したい法令・契約上の注意点」を参照)。
Q. 少量の業務でもアウトソーシングできますか?
委託先のサービス内容や最低契約条件によっては可能です。ただし、少量の業務では、委託費用や引き継ぎ・管理の負担が相対的に大きくなる場合があります。関連する業務をまとめて委託する方法や、自動化する方法も含めて検討するとよいでしょう。
Q. 外部委託によって、社内に業務のノウハウが残らなくなりませんか?
委託の進め方によっては、そのおそれがあります。業務手順や判断基準を文書化し、社内でも内容を把握できる状態を保つことが重要です。委託先が作成・更新したマニュアルの共有方法、データや成果物の管理方法、契約終了時の引き継ぎ方法についても、あらかじめ取り決めておきましょう。
まとめ:業務の切り出しは、外部と社内の役割を整理することから始めよう
バックオフィス業務をアウトソーシングする際は、外部へ任せたい業務を選ぶだけでなく、どの工程を、どこまで任せるかを明確にすることが重要です。特に、次の4つの考え方を押さえておきましょう。
- 外部に任せる前に、その業務自体が必要か、今の進め方が適切かを確認する
- 判断を伴う業務は、判断基準と権限を整理したうえで委託範囲を決める
- 業務の分解は細かく行い、委託する単位は受け渡しや管理の負担を考えてまとめる
- 委託後に社内に残る業務や委託費用も含めて、効果を判断する
最初の一歩として、負担を感じているバックオフィス業務を一つ選び、工程ごとに分けてみてください。そのうえで、判断が必要な箇所と、情報を受け渡している箇所を整理すると、外部に任せられる範囲や、先に整えるべきことが見えてきます。
大切なのは、アウトソーシング自体を目的にするのではなく、自社にとって適切な業務の進め方を考えることです。
Passage株式会社では、バックオフィス業務の代行に加え、お客様の業務内容や進め方を理解しながら、業務の整理や役割分担、運用の改善を一緒に考える支援を行っています。
「何を外部に任せればよいかわからない」「業務が属人化していて整理できていない」「マニュアルがない」といった段階でも、現在の業務を伺うところからご相談いただけます。



